8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 少女は残念そうに頭を下げた。フィオナは優しく頭を撫で、彼女に微笑んだ。

「だから、出来るように練習しましょう。経験は力になるのよ。間違えてしまったら、もう一度やり直してみればいい。きっといつか、出来るようになるわ」

 それは、フィオナの人生も同じだ。不思議な力によって、何度もあのときに戻されて、やむなく人生を生き直した。
 でも、今が一番楽しいし、言いたいことも言え、自分らしく生きられている気がする。だからだろうか、予感がする。

(きっと今回が、一番いい人生になるわ)

 これまでのフィオナに足りなかったのは、きっと自分の足で立つ覚悟だ。

 オスニエルに殺された最初の未来に怯えて、二度目も三度目も、ただ殺されないようにするためだけに動いてきた。守ってくれる人にすがり、身に降りかかる不幸を嘆いた。ただ、それだけ。流されるままの人生をただ嘆くだけだった。

 自分がやりたいことを見つめてこなかったから、自分で自分を大切にしようとしなかったから、フィオナは幸せになり切れなかったのだ。

(私が、人生を楽しむことが大切だったんだわ)

 人生を作るのは自分自身だ。自分で楽しめなければ、意味がない。
 八度も人生をやり直して、ようやくそれに気づいた気がする。
 そんな万感の思いを胸に、フィオナは孤児たちに微笑んだ。

「さあ、みんなでやってみましょう? いつかきっとできるようになるわ」