王妃と別れた後は、ポリーと作戦会議だ。
「まずは孤児院訪問の日程を決めましょう。その前に院長先生にお手紙を書くわね。こちらの都合だけ押し付けるわけにはいかないもの。あちらの普段の生活を教えてもらいましょう。その上で、紐編みを覚える時間をとれるといいわね」
「ええ。でも、父はできるだけ早く量産したいと言っています。何事も商機がありますからね。売れているうちに売って、次の流行を作らないと。商売はずっとひとところに留まっていてはできません」
ポリーの言うことももっともだ。
フィオナの計画を遂行するためには、できるだけすべてを早く進めなければならないだろう。サンダース男爵も商人としてはやり手だ。遅々として進まないと感じれば、自ら女工を手配して商品開発に乗り出すかもしれない。
「とにかく今は材料の紐を欠品なく入手できるように、整えてほしいと伝えて。貴族女性たちの間で盛り上がっているから、商品そのものよりもしばらくは注文が入ると思うわ」
「分かりました! お任せください」
フィオナは、できるだけ急ぎで面会したいと孤児院への手紙をつづった。
そうして、一週間後、フィオナはサリファン孤児院を訪れていた。サンダース商会にも近い位置にある孤児院である。
何度か院長とやり取りしたフィオナは、慰問と称して紐編みを子供たちに教えた。小さい子の作るものは、とても商品にはならないが、十歳くらいの子供は器用に作る。中には、フィオナが作るものよりも上手な子もいた。
「これは素敵ね。売り物になると思うわ。……ポリー」
「そうですね。こちらは買い取ります。材料費を抜いて……このくらいでしょうか」
机の上に置かれた銀貨を見て、子供たちがわっと騒ぐ。
「……私のも、売れる?」
「これは駄目ね。つくりが荒いもの。いい、みんな。物を売ってお金を稼ぐときには、一定の品質を保たなければならないの。これを見て。編み目が均一でしょう? こうでないと、お店における商品にはならないのよ」



