8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 フィオナ主催の二度目のお茶会は、主に髪飾りを作るのが目的だったが、参加者には大好評を博した。

「おかげで、紐単体でもめちゃくちゃ売れてますからー!」

 ご機嫌なのはポリーだ。お茶会で作り方を覚えた令嬢たちが、こぞって注文しているのだそう。たしかに、最近は髪だけではなく服に花飾りをつけている令嬢も多くなってきた。
 次はいつお茶会を開くのか。次こそは自分も行きたい……。そういった空気が令嬢間では広まっていた。

 おもしろくないのは、ジェマである。宮中の流行を、人質同然の側妃が作り出すなど、冗談じゃない。ジェマはいきり立って父親に詰め寄った。

「お父様、どうにかして早く私と殿下の結婚話をまとめてくださいませ!」

「ジェマ、落ち着け。陛下からも殿下からも、側妃を迎えた建前上、一年は待てと言われているのだ」

「そんなに時間をかけていたら、宮中の女性人気が、あちらに行ってしまいますわよ!」

 女性は流行りに弱い。流行を作れる人間をあがめる傾向にあるのだ。それに、言いたくはないがフィオナには楚々とした美しさがある。輝く銀色の髪もこの国では珍しく、神々しく見えるところもいただけない。

「とにかく、あの女の欠点を探らなくては」

 ジェマはフィオナの侍女がひとりだけというところに目をつけ、自分の息のかかった侍女を送り込もうとした。けれど、フィオナには人は足りていると言い、追い返されてしまう。
 仕方なく、彼女の唯一の侍女であるポリーを呼び出す。

「何の御用でしょう。ジェマ様」

 ポリーが社交界デビューしたとき、ジェマは成金男爵の娘への洗礼として、ポリーの教養のなさを人前で暴露したことがある。それ以来、ポリーはジェマには怯えていて、近寄ろうとして来ない。

「あなた。今フィオナ様の侍女をなさっているでしょう? あの方の苦手なものとかを教えていただけないかしら」

 扇で口元を隠しながら、ポリーに耳打ちする。
 てっきり怯えてすぐ従うと思ったのに、ポリーはきょとんとしたまま小首をかしげる。