8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 期待半分でおそるおそる目を開けると、フィオナの後頭部が見えた。床に座り込み、オスニエルの肩に頭を預けるようにして寝ているのだ。

「こ、この女……」

 期待させておいて……と考えてから、期待とは何だ! と脳内が大混乱だ。

「……おいしい」

 だが、フィオナの寝言を聞いたとたん力も抜ける。

「全く、のんきなもんだ。人質だという自覚があるのか」

 髪を撫でれば、銀色の毛がさらりと流れている。彼女にとって、ここでの生活はなんなのだろうと、ふいに思う。
 殺されかけたことも分かっていて、どうして平気な顔でこんな無防備な姿を見せられるのか。華奢な体に、妙に肝の据わった性格。そのギャップにどうしても目がいってしまう。

 オスニエルは起き上がり、フィオナを抱き上げた。彼女の眠りはそれなりに深く、小さく呻いただけで眠り続けている。
 寝室へ連れていくと、彼女の飼い犬がベッドを占領していた。

「どけ。寝かす」

「キャン」

 ドルフは小さく不満の声を上げながらもベッドの場所を開けた。そこにオスニエルがフィオナを下ろす。ガウンの隙間から見える、薄い夜着に、オスニエルは目のやり場に困る。
 少し酔っていることもあり、どうにもムラムラしてくる。

(妻は妻だ。別に手を出しても……)

 本能に従って彼女の頬に手をあてれば、「ギャン」と犬に鳴かれてしまう。我に返ったオスニエルは、「なんでもない!」と誰にとは言わず言い訳をして、フィオナに布団をかけ、足早に部屋を出ていった。