8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 オスニエルは途中からくすぐったさに目を開けた。後頭部が異常に痛い。けれど顔の表面を撫でる手が妙に優しくくすぐったく、不思議な感覚になりながら薄目を開けた。
 するとフィオナがすぐそばにいるではないか。しかもニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。

(今、目を開けるわけにはいかないじゃないか!)

 仕方なく、彼は寝たふりを続行することにした。
 ごくん、となにかを飲み込む音がする。どうやらフィオナが酒を飲んでいるようだ。

(飲めないんじゃなかったのか。おのれ、俺をたかばったな)

「見た目はすごく好きなんだけどなぁ……」

 だが、普段言われたことのない言葉を告げられて、オスニエルはますます目が開けられなくなる。しかも、フィオナは柔らかく細い指で、オスニエルの鼻筋を撫でているのだ。肌に触れる人の温度が気持ちいい。オスニエルはもう長らく、こんな柔らかな手で撫でられたことが無い。

(……なんなんだ。この変な気分は)

 くすぐったくて頬を緩めてしまった。するとフィオナの空気も、少しほぐれた感じがする。

「寝ているオスニエル様は、かわいい……」

 ドキリというようなことを言ったかと思うと、彼女は崩れるように体を預けてきた。オスニエルはドキドキが止まらない。

(なんだ、これは。まさかフィオナは……俺のことが好きなのか?)