近づいてくるのは彼の端整な顔だ。やはり見目が良い……と見とれていると、鈍い音と共に、彼が倒れ込んできた。
「きゃっ」
肩に頭を埋められて、彼の体重が容赦なくのしかかる。苦しい。
すぐに彼の背中からドルフが顔を出し、大きくなって彼の服を加えて持ち上げた。どうやらオスニエルは意識を失っているらしく、だらんと腕を伸ばしていた。
「なにが起きたの……!」
『お前がぼーっとしているから、俺がこいつの頭を蹴ってやったんだ』
オスニエルの下から抜け出し、そのままソファに彼を寝かせる。触ってみれば、確かに後頭部にたんこぶができている。
「ありがとう。ドルフ」
『ふん。嫌がってもいなかったのだろうがな』
「そんなことないわ」
フィオナは真っ赤になって首を振ったが、ドルフは冷たい目を向けるだけだ。
『誤魔化しても無駄だ。加護の力が発動しなかったということは、お前は嫌じゃなかったんだろ』
たしかに、街で男に触られそうになった時は、氷魔法が発動した。あの時も、フィオナが出そうと意識したわけではなかった。
「でも、それは」
『ふん。お前はすぐほだされる』
ぷい、とそっぽを向き、ドルフは寝室へと行ってしまった。残されたフィオナは途方に暮れる。
「ほだされてなんかないわよ」
オスニエルをソファに寝かし、毛布を掛ける。簡単にテーブルの上を片付け、彼の飲みかけのお酒を一口だけ口にした。
「おいしいじゃない」
飲み口のいいお酒だった。
オスニエルが飲んだのは二杯くらいで、まだ瓶にも残っている。強そうに見えるが、意外とお酒に弱いのかもしれない。
「とりあえず言質は取ったし、明日は令嬢たちとのお茶会もあるし、堂々と稼ごう!」
決意を固め、調子に乗って飲み続けたフィオナは、やがて本当に酔ってしまった。
視界がクルクル回るし、頭はぼーっとするし、なにより気が大きくなっていた。
ソファに横になる、理想の顔のオスニエルを見つめる。
通った鼻筋、薄い唇、意志の強そうな瞳。力は強いのに、どこか繊細さを思わせる顔だ。
「見た目はすごく好きなんだけどなぁ……」
どうせ起きないと思い、フィオナは彼の鼻筋を指でなぞる。
酔った頭で思うのは、これまで何度か繰り返した人生だ。
彼の妻になった人生も、彼に抱かれた人生もあった。それでも、こんな風に彼の無防備な顔を見ることはなかったように思う。
「寝ているオスニエル様は、かわいい……」
彼の顔を撫でているうちに、フィオナも眠気に襲われる。そのまま突っ伏したら、すぐに意識を失ってしまった。
「きゃっ」
肩に頭を埋められて、彼の体重が容赦なくのしかかる。苦しい。
すぐに彼の背中からドルフが顔を出し、大きくなって彼の服を加えて持ち上げた。どうやらオスニエルは意識を失っているらしく、だらんと腕を伸ばしていた。
「なにが起きたの……!」
『お前がぼーっとしているから、俺がこいつの頭を蹴ってやったんだ』
オスニエルの下から抜け出し、そのままソファに彼を寝かせる。触ってみれば、確かに後頭部にたんこぶができている。
「ありがとう。ドルフ」
『ふん。嫌がってもいなかったのだろうがな』
「そんなことないわ」
フィオナは真っ赤になって首を振ったが、ドルフは冷たい目を向けるだけだ。
『誤魔化しても無駄だ。加護の力が発動しなかったということは、お前は嫌じゃなかったんだろ』
たしかに、街で男に触られそうになった時は、氷魔法が発動した。あの時も、フィオナが出そうと意識したわけではなかった。
「でも、それは」
『ふん。お前はすぐほだされる』
ぷい、とそっぽを向き、ドルフは寝室へと行ってしまった。残されたフィオナは途方に暮れる。
「ほだされてなんかないわよ」
オスニエルをソファに寝かし、毛布を掛ける。簡単にテーブルの上を片付け、彼の飲みかけのお酒を一口だけ口にした。
「おいしいじゃない」
飲み口のいいお酒だった。
オスニエルが飲んだのは二杯くらいで、まだ瓶にも残っている。強そうに見えるが、意外とお酒に弱いのかもしれない。
「とりあえず言質は取ったし、明日は令嬢たちとのお茶会もあるし、堂々と稼ごう!」
決意を固め、調子に乗って飲み続けたフィオナは、やがて本当に酔ってしまった。
視界がクルクル回るし、頭はぼーっとするし、なにより気が大きくなっていた。
ソファに横になる、理想の顔のオスニエルを見つめる。
通った鼻筋、薄い唇、意志の強そうな瞳。力は強いのに、どこか繊細さを思わせる顔だ。
「見た目はすごく好きなんだけどなぁ……」
どうせ起きないと思い、フィオナは彼の鼻筋を指でなぞる。
酔った頭で思うのは、これまで何度か繰り返した人生だ。
彼の妻になった人生も、彼に抱かれた人生もあった。それでも、こんな風に彼の無防備な顔を見ることはなかったように思う。
「寝ているオスニエル様は、かわいい……」
彼の顔を撫でているうちに、フィオナも眠気に襲われる。そのまま突っ伏したら、すぐに意識を失ってしまった。



