8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

「願いとは何だ」

「実はこの髪飾りや首輪を、侍女のポリーがとてもいいと言ってくれて、実家のサンダース商会で販売してくれたのです。そうしたらなかなか売れたようで。その……それをもっと作りたいと言ってくださってですね」

「販売……?」

「ええ。人気があるのなら、作り方を教えて事業にすればいいのではないかと思うのです。幸い、作り方が難しいわけではないのです」

「しかし、王家のものが商売するなど……」

 オスニエルの眉がゆがむ。ここが押しポイントだ。

「ええ。王家に連なるものが私利私欲を求めてはなりません。ですから慈善事業に近しい手法をとりたいと考えています。まずは孤児院の子供たちにこの技術を教え込むのです。そして売り上げの一部を、孤児院の運営資金に回します。そうすれば国庫から出ている孤児院運営のための予算を少しでも減らすことができるでしょう」

 オスニエルは瞬きをした。予想外に、フィオナの提案が有用なものだったからだ。

「そもそも、孤児院運営は女性に割り当てられた仕事です。私は正妃ではないので、本来なら出しゃばった行為になるのかもしれませんが、今は正妃もいらっしゃいません。であれば、私にその役をやらせていただけないでしょうか」

 じっと見つめていると、オスニエルがゆっくりと目をそらした。彼は耳まで赤くなっている。どうやら酒が強すぎたのだろうか。

「……分かった」

「本当ですか!」

「悪くはない案だ。ただし、その事業がうまくいかなかったときの責任もお前がとるのだ。そ、それでいいか」

「もちろんです!」

 フィオナが弾んだ声で答え、彼の手の届く範囲からすっと身をよける。と、ふいに肩を掴まれた。そのまま力が籠められ、フィオナは座っていたソファに押し倒される。

「え……?」

 心臓が飛び出したかと思うほど驚いた。自分の顔に影がかかり、見下ろしてくるオスニエルの顔が見える。大きな手は、フィオナの肩をすっぽりと包み、熱っぽい呼吸が額にかかる。

「なに……」

「フィオナ……」