8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~


 オスニエルがやってきたのは、その一時間後である。
 ポリーはお酒やおつまみを出すと、早々に退散する。強引に夜着を着せられたフィオナは、恥ずかしいのでガウンを羽織っている。
 その姿を見たオスニエルは、面食らったようだった。

「…………待たせたか?」

 たっぷりとられた沈黙に、あらぬ考えをされたらと思うと、フィオナは落ち着かない。

「いえっ、全然っ、すみません遅くに。相談があるだけなのです」

「相談?」

 ゆっくりと座ったオスニエルに、まずはお酒を注ぐ。

「お前も飲むか?」

 杯を向けられたが、フィオナは首を振った。母国は寒い地方なので、お酒は体を温めるものとして飲むが、判断力が鈍るので今はよくない。

「遅くまでお疲れ様です」

「ああ。お前はどうだ? 毎日何をしている?」

「私は……」

 ドルフの首輪を触りながら、オスニエルのために作った剣の鞘飾りを差し出す。

「こういったものを作っています」

「……最近よく見るな。お前のドレスにもついていた。あれは仕立て師が作ったものではないのか?」

「私が、手慰みで作っているものです。こちらは、よろしければ殿下に」

「…………俺に?」

 またも長い間がとられる。こんなものと言われるのかとげんなりして言葉を待ったが、いつまで経っても続きが来ないので、薄く目を開けて見上げる。
 オスニエルはそっぽを向いていた。だが、その頬が赤い。

(照れてる……? いや、お酒飲んでいるからか)

 あり得ない想像に苦笑していると、ぼそりと「いただこう」と告げられた。

「もらってくださるんですか」

「仕方なくだぞ? 側妃の初めての贈り物を断るほど、俺は心の狭い男ではない」

「そうですか。では、側妃の初めてのお願いも聞いてはいただけませんか?」

 フィオナはずいと前に出る。オスニエルがさらに顔を赤くした。意外とお酒に弱いのかもしれない。押すなら今だ、と頭の奥から声がする。