オスニエルがやってきたのは、その一時間後である。
ポリーはお酒やおつまみを出すと、早々に退散する。強引に夜着を着せられたフィオナは、恥ずかしいのでガウンを羽織っている。
その姿を見たオスニエルは、面食らったようだった。
「…………待たせたか?」
たっぷりとられた沈黙に、あらぬ考えをされたらと思うと、フィオナは落ち着かない。
「いえっ、全然っ、すみません遅くに。相談があるだけなのです」
「相談?」
ゆっくりと座ったオスニエルに、まずはお酒を注ぐ。
「お前も飲むか?」
杯を向けられたが、フィオナは首を振った。母国は寒い地方なので、お酒は体を温めるものとして飲むが、判断力が鈍るので今はよくない。
「遅くまでお疲れ様です」
「ああ。お前はどうだ? 毎日何をしている?」
「私は……」
ドルフの首輪を触りながら、オスニエルのために作った剣の鞘飾りを差し出す。
「こういったものを作っています」
「……最近よく見るな。お前のドレスにもついていた。あれは仕立て師が作ったものではないのか?」
「私が、手慰みで作っているものです。こちらは、よろしければ殿下に」
「…………俺に?」
またも長い間がとられる。こんなものと言われるのかとげんなりして言葉を待ったが、いつまで経っても続きが来ないので、薄く目を開けて見上げる。
オスニエルはそっぽを向いていた。だが、その頬が赤い。
(照れてる……? いや、お酒飲んでいるからか)
あり得ない想像に苦笑していると、ぼそりと「いただこう」と告げられた。
「もらってくださるんですか」
「仕方なくだぞ? 側妃の初めての贈り物を断るほど、俺は心の狭い男ではない」
「そうですか。では、側妃の初めてのお願いも聞いてはいただけませんか?」
フィオナはずいと前に出る。オスニエルがさらに顔を赤くした。意外とお酒に弱いのかもしれない。押すなら今だ、と頭の奥から声がする。



