8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 あまりにも顔を見せない彼にしびれを切らし、自分から後宮を出ていって、オスニエルに約束を取り付けたが、意外にも怒られなかった。

 緊張が解け、フィオナは今のソファに体を預けてくつろいだ。脇から、賑やかな声がする。

「よーしよし、ドルフ様! よしというまで待つんですよ」

「キャン!」

「よし!」

「キャン!」

 ドルフがポリーからおやつをもらっている。何年も生きている聖獣のくせに、そしてもう正体もばれているのに、子犬らしい仕草をするところがあざとい。

(でも、ドルフがいると安心するな)

 普段なら怯えてしまうオスニエルに対しても、ドルフがいてくれると強気でいられる。なんだかんだと精神安定に大きな影響を及ぼしているのだ。

「ポリー、そろそろ準備してくれる?」

「はい。オスニエル様がお越しになるのですよね。お酒とおつまみはちゃんと用意してありますからご安心ください!」

「ありがとう」

 酔わせて、「うん」と言わせる作戦である。

「あと、フィオナ様の衣裳も用意いたしました」

「衣裳?」

「失礼ながら、お持ちになった夜着はあまりに落ち着いたものばかりでしたので。良ければお使いください。素敵な髪飾りを作っていただいているお礼です!」

 ポリーが差し出したのは、スケスケの夜着だった。思わず顔を引きつらせていると、ポリーは善良そうな微笑みでこう言い放った。

「オスニエル様の久しぶりの御渡りですし。男女間には色仕掛けも大事ですよ!」

「ほほ……はい」

 フィオナはぎこちなく笑いつつも脱力した。