「なにこれ、おいしい。材料は単純なのに」
「おいしいよね、お姉ちゃん!」
ポリーは大興奮である。
「フィオナ様、いったいどうやって……はっ、まさか、これもドルフ様の?」
フィオナは片目をつぶり、ふたりに内緒話をするようにこっそりと囁いた。
「内緒よ。ほんの少しだけ魔法が使えるの」
「魔法?」
「少しだけ、聖獣の加護をもらったの」
微笑むと、ポリーはごくりと生唾を飲み込み、頷いた。
笑顔に戻った少女を店まで送り、ポリーとフィオナも帰ることにする。
「結局、レインボーキャンディは買えませんでしたね」
「そうね。でもいいわ。レモネードシャーベットはおいしかったもの」
「そうですね。私もこれなら新しい流行りを作れる気がします。あとは氷をどうやって安価に調達するかですね……」
すでに材料調達のための構想を練っている様子だ。どう見ても、ポリーは侍女などをしているより商人向きだ。
来たときと同じように、先にポリーを行かせ、フィオナはドルフに時間を止めてもらって戻る。
そこから三十分ほどして戻ってきたポリーは、すでに部屋に戻っているフィオナとドルフを見て、驚きを隠せないようだったが、理由を問いかけられはしなかった。
「すごいわ。これが聖獣の力……! そして聖獣を操る聖女!」
盛られた肩書をポリーがつぶやく。どうにも勘違いされていそうだが、面倒くさいのでそのままにすることにした。



