8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~


「なにこれ、おいしい。材料は単純なのに」

「おいしいよね、お姉ちゃん!」

 ポリーは大興奮である。

「フィオナ様、いったいどうやって……はっ、まさか、これもドルフ様の?」

 フィオナは片目をつぶり、ふたりに内緒話をするようにこっそりと囁いた。

「内緒よ。ほんの少しだけ魔法が使えるの」

「魔法?」

「少しだけ、聖獣の加護をもらったの」

 微笑むと、ポリーはごくりと生唾を飲み込み、頷いた。
 笑顔に戻った少女を店まで送り、ポリーとフィオナも帰ることにする。

「結局、レインボーキャンディは買えませんでしたね」

「そうね。でもいいわ。レモネードシャーベットはおいしかったもの」

「そうですね。私もこれなら新しい流行りを作れる気がします。あとは氷をどうやって安価に調達するかですね……」

 すでに材料調達のための構想を練っている様子だ。どう見ても、ポリーは侍女などをしているより商人向きだ。
 来たときと同じように、先にポリーを行かせ、フィオナはドルフに時間を止めてもらって戻る。

 そこから三十分ほどして戻ってきたポリーは、すでに部屋に戻っているフィオナとドルフを見て、驚きを隠せないようだったが、理由を問いかけられはしなかった。

「すごいわ。これが聖獣の力……! そして聖獣を操る聖女!」

 盛られた肩書をポリーがつぶやく。どうにも勘違いされていそうだが、面倒くさいのでそのままにすることにした。