「……怒られちゃう」
「仕方ないわ。あなたにも悪いところはあるのよ。他の目的があって並んでいるのだもの、別のものを売りつけられそうになれば、怒る人がいてもあたり前でしょう」
「今、レモネードなんて流行らないですもんね」
ポリーに言わせれば、レモネードのブームは一年前らしい。王都の流行の移り変わりは激しく、田舎から夢を見て都会に出て露店商となる人間は多いが、たいていはその変化の速さに追いつけずに潰れていくのだそうだ。
「流行りねぇ。いいわ。これは私が買い取るわね」
少女の手のひらに銅貨を一枚のせ、レモネードを受け取る。ずいぶんと炭酸が抜けて甘い水のようになっていた。それにぬるい。フィオナはこっそりと氷を作り出して入れてみた。冷たい方が断然おいしい。
「氷を入れて売ったらどう?」
少女は首を振る。
「フィオナ様、氷は高額なんですよ。保管が大変ですからね」
「まあ、そうなの」
ブライト王国では、ルングレン山が近く、氷や雪は簡単に手に入れられた。そもそも、結界が張られ、温暖となっている地域以外は、常に池が凍るくらいには寒い地方だ。
ふわふわの雪は、フィオナにとってはおやつのようなものだった。溶ければただの水だけれど、雪はその食感が楽しく、不思議とおいしいような気分になったものだ。
「雪を……そう、雪よ」
氷の粒子をできうる限り細かくし、一気に器の中に投入する。すると下に沈んでいたレモネードの液体が、ジワリとしみだしてくる。
「こうしたらおいしいんじゃないかしら」
「……フィオナ様、この雪はどこから?」
「まあまあ、それは置いておいて」
ポリーの疑問はもっともだが、フィオナは無視することにした。
「おいしい……!」
少女がぽつりと口にする。
「シャリシャリして、口の中で溶けてくの。時々シュワシュワするところもおいしい」
「気に入ってもらえたならよかったわ」
フィオナはにっこりと微笑む。すると、商人魂が刺激されたのか、ポリーが「私にも味見させてください!」と身を乗り出してくる。
「仕方ないわ。あなたにも悪いところはあるのよ。他の目的があって並んでいるのだもの、別のものを売りつけられそうになれば、怒る人がいてもあたり前でしょう」
「今、レモネードなんて流行らないですもんね」
ポリーに言わせれば、レモネードのブームは一年前らしい。王都の流行の移り変わりは激しく、田舎から夢を見て都会に出て露店商となる人間は多いが、たいていはその変化の速さに追いつけずに潰れていくのだそうだ。
「流行りねぇ。いいわ。これは私が買い取るわね」
少女の手のひらに銅貨を一枚のせ、レモネードを受け取る。ずいぶんと炭酸が抜けて甘い水のようになっていた。それにぬるい。フィオナはこっそりと氷を作り出して入れてみた。冷たい方が断然おいしい。
「氷を入れて売ったらどう?」
少女は首を振る。
「フィオナ様、氷は高額なんですよ。保管が大変ですからね」
「まあ、そうなの」
ブライト王国では、ルングレン山が近く、氷や雪は簡単に手に入れられた。そもそも、結界が張られ、温暖となっている地域以外は、常に池が凍るくらいには寒い地方だ。
ふわふわの雪は、フィオナにとってはおやつのようなものだった。溶ければただの水だけれど、雪はその食感が楽しく、不思議とおいしいような気分になったものだ。
「雪を……そう、雪よ」
氷の粒子をできうる限り細かくし、一気に器の中に投入する。すると下に沈んでいたレモネードの液体が、ジワリとしみだしてくる。
「こうしたらおいしいんじゃないかしら」
「……フィオナ様、この雪はどこから?」
「まあまあ、それは置いておいて」
ポリーの疑問はもっともだが、フィオナは無視することにした。
「おいしい……!」
少女がぽつりと口にする。
「シャリシャリして、口の中で溶けてくの。時々シュワシュワするところもおいしい」
「気に入ってもらえたならよかったわ」
フィオナはにっこりと微笑む。すると、商人魂が刺激されたのか、ポリーが「私にも味見させてください!」と身を乗り出してくる。



