8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

「ほう。慈善事業と組んで、ということですな。王太子妃の事業ということであれば、その方向性は正しいと思います。ですが、ポリーから聞いたのですが、このアクセサリーの売り出しに関しては、王太子様の許可を得ていないのでしたな」

「ええ」

「もちろん、フィオナ様の名を隠して販売することはできますが、名を出したほうが、反響が大きいのは事実です。孤児院の子供を雇用するというならば余計ですな。逆に言えば、孤児院で作られたものは、上流貴族は買いません。ですが、王太子妃が率先して行った慈善事業という名が付けば別でしょう。上流貴族は、慈善事業という名目で購入するようになる。……それらを踏まえれば、この事業に関してはフィオナ様の名を出すのが一番いいと私は考えています。ですので、可能ならば王太子様の許可を得て、フィオナ様の事業として宣伝できればと思うのですが」

 切々と語られる男爵の説明は、納得できないわけじゃない。けれど、実現にはだいぶ難しい。

「夫の許可がいる……ということですか」

「そうですね」

「それ以外に売る方法は?」

「ないわけではありませんが、長くやればいずれはバレましょう。名前が出せない場合、孤児院の事業の方は協力することが叶いません。こちらも商売ですから」

 その理屈も理解できる。しかしオスニエルに話して許可などもらえる気がしなかった。だが、せっかく軌道に乗りかけている事業だ。どうしても成功させたい。

「……検討してみます」

 フィオナはそれだけを言って、サンダース商会を後にした。