「実は、私がフィオナ様の作られた飾りを見て、髪飾りにさせていただけないかと提案したのです。ですから発案はフィオナ様なんですよ」

「まあ」

 またもや、わっと歓声が上がる。先ほどから、ナイスアシストが続く。これはフィオナ自身もがんばらねばならない。

 フィオナは、その丸い目を少し伏せ、頬を染めて恥じらうふりをする。

「拙い出来で恥ずかしくはありますし、細工師のつくる精巧で素晴らしいものには叶わないのも分かっていますが、かわいいペットには自分の手で作ったものを飾るのも素敵だと思いませんか」

 わっと盛り上がり、先ほどとは目の色が変わってきた。

「飾りの作り方はいつ教えていただけますの?」

「楽しみでしかたがありませんわ」

 内心でガッツポーズをして、フィオナは二週間後にまた茶会を開く約束をした。

 ここまでできれば、今日の成果としては上々だろう。あとは普通に楽しもうと、フィオナは聞き役に回る。男爵令嬢たちは街に出ることも多いらしく、たくさんの情報を持っていた。とりわけ街ではやっているスイーツの話はフィオナの心を躍らせた。

「とっても不思議なんですのよ。ふわふわとしていて甘いんです。色もカラフルで綺麗なんですの」

「わあ。素敵ですね」

 レインボーキャンディというものが、市場ではやっているらしい。おいしいものはできるだけ自分の舌で味わってみたい。

『行きたいのか』

 こっそりとドルフが聞いてくる。大きく頷いた後、でも、自分には外出の自由がないことを思い出し、肩を落として首を振る。

『馬鹿だなお前は。この俺が、オスニエルごときを出し抜けないわけがないだろう?』

「……内緒で行ける?」

『無論。かわいいペットのわがままくらい、聞いてやる』

 マイペースで不遜な聖獣ではあるが、意外と面倒見はいいらしい。