8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

「なぜ黙っているんだ」

「なぜって……お話することが無いからです」

 はっきり言ったフィオナに、オスニエルの方も困惑する。

「お前は俺に気に入られなければ、この王宮で居場所がないはずだ。であれば、俺の機嫌をとろうとするものではないのか?」

 突然、思ってもいないことを言われ、目が点になった。ドルフが、おもしろそうだと思ったのか、フィオナの膝に乗ってくる。

「オスニエル様は、私のことを妻としては扱わないとおっしゃいましたよね。そんな宣言されたのに、私に妻として媚びろなどと言うのは、おかしなことだと思いませんか?」

「だが……!」

「私、知っているんですから! オスニエル様は私を殺したいほどお嫌いなのでしょう?」

 思わず言ってしまうと、オスニエルは目を見開いた。

「何を根拠に」

「輿入れの馬車が襲われました。逃げながら聞いてしまったのです。これがオスニエル様の計画であることを」

 オスニエルは黙ったままだ。どう問い詰められようと認めてしまっては分が悪くなるということなのだろう。

「そこまで嫌われているならば無理に愛してほしいなどとは思いません。むしろ、私が見えるところにいれば目障りでしょう。今日以降、私はできるだけあなたの目に付かないように生活いたします。離縁したくなった時はそうおっしゃってください。ただ、その場合、ブライト王国の安全だけは保障していただきますが」

 フィオナにとって大切なのは、ブライト国の安全だけだ。愛はもういらない。

「離縁などしない! お前は婚儀の夜になんて事を言うのだ」

 激高されてもフィオナも困る。一体オスニエルはどうしたというのか。媚を売られるのも、同情を得ようとされるのも好きではないくせに。しなければ怒るというのならば、フィオナが何をしても気に入らないということではないか。