それを、見ていた人影がいた。
「……あの男は誰だ?」
オスニエルである。明日の結婚式を前に、客人であるエリオットに挨拶に来たところ、今の場面に出くわした。
「エリオットさまの護衛騎士ですね」
ロジャーが、ブライト王国に関する調書をめくりながら言う。
「どうやらご姉弟とは幼馴染みのようですね。フィオナ姫が輿入れする前までは、姫の護衛騎士を勤めていたようです」
「ほう」
なぜか、モヤモヤしたものがオスニエルの胸を覆う。
ペットに向けたような無邪気な笑みを、なぜあの男に向けるのか。まさか恋人だったりしたのだろうか。
自分の考えにショックを受けたことが、自分でも気に入らない。フィオナに恋しい男がいても関係ない。自分は彼女を妻として扱う気はないのだ。
「もう行く」
「オスニエル様、お待ちください。ご挨拶に参られたのでしょう? 晩餐の前に客人にちゃんとご挨拶なさらないと、夫としては失格では?」
「あいつは人質だ。俺の妻などではない」
「建前は妻でしょうが」
「うるさい。あいつの弟に礼を失しても何の問題もない!」
ロジャーのからかい交じりの声を背中に聞いたまま、オスニエルはその場を離れた。どうにも最近調子が悪い。
それもこれも、フィオナがあまりに薄気味悪いからだ。
(俺を前にしても怯えた様子もなく、敵意交じりのまなざしを向けてくる。かと思えば、ペットや侍女やかつての護衛騎士には無防備極まりない笑顔を見せる)
それがなぜだか、オスニエルにはおもしろくないのだ。
「……あの男は誰だ?」
オスニエルである。明日の結婚式を前に、客人であるエリオットに挨拶に来たところ、今の場面に出くわした。
「エリオットさまの護衛騎士ですね」
ロジャーが、ブライト王国に関する調書をめくりながら言う。
「どうやらご姉弟とは幼馴染みのようですね。フィオナ姫が輿入れする前までは、姫の護衛騎士を勤めていたようです」
「ほう」
なぜか、モヤモヤしたものがオスニエルの胸を覆う。
ペットに向けたような無邪気な笑みを、なぜあの男に向けるのか。まさか恋人だったりしたのだろうか。
自分の考えにショックを受けたことが、自分でも気に入らない。フィオナに恋しい男がいても関係ない。自分は彼女を妻として扱う気はないのだ。
「もう行く」
「オスニエル様、お待ちください。ご挨拶に参られたのでしょう? 晩餐の前に客人にちゃんとご挨拶なさらないと、夫としては失格では?」
「あいつは人質だ。俺の妻などではない」
「建前は妻でしょうが」
「うるさい。あいつの弟に礼を失しても何の問題もない!」
ロジャーのからかい交じりの声を背中に聞いたまま、オスニエルはその場を離れた。どうにも最近調子が悪い。
それもこれも、フィオナがあまりに薄気味悪いからだ。
(俺を前にしても怯えた様子もなく、敵意交じりのまなざしを向けてくる。かと思えば、ペットや侍女やかつての護衛騎士には無防備極まりない笑顔を見せる)
それがなぜだか、オスニエルにはおもしろくないのだ。



