8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 翌日、結婚式に出席するために、ブライト王国から弟のエリオットとその護衛たちがやってきた。
 護衛の中に、ローランドの姿を見つけたフィオナは、うれしさのあまり、勢いよく駆け寄った。

「エリオット! ローランド! 久しぶりね」

 国を出てきたのは一週間前なのに、もう懐かしく感じてしまう。
 そんな姉の様子に気づいたエリオットは、心配そうに手を握る。

「姉上、ご無事でなによりです。輿入れの際、盗賊に襲われたと聞きましたが怪我などはなかったのですか?」

「私は大丈夫よ。それより、トラヴィスたちは無事に戻ったかしら」

 輿入れ道具が届けられたときにポリーを通じて聞いてみたが、護衛たちの無事に関してはわからないということだった。騎士団長とはあの日以来会うことはなく、オスニエルともほとんど話もしていない。詳細な情報があるならば教えてもらいたかった。

 エリオットとローランドは困ったように顔を見合わせた。話そうか話すまいか迷っているような態度だ。やがてエリオットが頷くと、ローランドが口を開く。

「実は、トラヴィスだけが行方不明なのです」

「え?」

「他の者たちは、インデスの警備隊が見つけ保護したそうです。治療を終えてから帰ってまいりました。だが、彼らもトラヴィスの行方は知らないそうです。いつの間にか姿を消していた……ということで。彼らを襲った盗賊も、残念ながら見つけることはできませんでした」

 ローランドは品のいい顔に皺を刻んだ。ローランドとトラヴィスはブライト王国でも腕利きのふたりだ。他のものが無事なのに、トラヴィスだけがやられるのは、可能性としては低い。

「そう……心配ね」

「あいつのことです。姫がおられなくなった王城に仕官するのに飽きたということも考えられましょう。彼はもともと、姫様のために騎士になったのでしょうし」

「まあ、そんなことを言ったら、トラヴィスのお父様が泣くわよ」

「でも事実です。俺によく語ってくれました」