8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 フィオナはドルフを抱き上げたまま、ソファに体を預けた。

「なんで、オスニエル様がここに来るのよ」

『さあな。様子を見に来たんじゃないのか』

 尻尾をご機嫌に振りながら、ドルフはフィオナの膝の上に乗っている。

「まあでも、あんな宣言したってことは、これからは私に関わらないでいてくれるってことよね」

『さあな』

 むくりと体を起こし、ドルフはフィオナの頬をぺろりと舐める。

『ほかの男のことばかり話すな。うるさい』

「だって。あの男は私を殺すかもしれないのよ?」

『そんなこと、もうできないだろう。お前に敵意を向けられれば、俺が授けた力が反応するはずだ』

「そうなの?」

 ドルフがくれたのは氷の力だ。フィオナはまだうまく使いこなすことができていないが、確かに殺傷能力はありそうだ。

「じゃあドルフが私に加護をくれたってこと?」

『少しだけだ』

 プイとそっぽを向いたので、これ以上追及するのは辞めたが、もしドルフがちゃんとフィオナに加護をくれるのならば、国の決まりに従い、フィオナはブライト王国の女王になれるはずなのだ。
 とはいえ、健気で聡明な弟を押しのけてまで、王権を手にする気もないけれど。

(でも、加護があるのなら、国に帰りたい)

 故郷を思い、寂しい気分で部屋の方に向かうと、応接室からポリーが元気よく手を振っている。

「フィオナ様―! いい報告があります!」

 朝の支度が終わった後から出かけていて、帰ってきたところのようだ。ソバカスの散った頬を赤く染め、うれしそうに飛び跳ねている。

(ポリーは元気ね)

 フィオナが苦笑しながら中に入ると、彼女は両手を小刻みに振りながら興奮した様子だ。