オスニエルは、彼女の姿が見える位置で止まった。茂みの陰から、走ってくる犬を両手で抱き留めるフィオナが見える。初日にオスニエルに見せたのとは全く違う、無警戒な微笑み。
軽やかな笑い声は、耳に心地よく、目には力があり生き生きと輝いている。
オスニエルは見とれていた自分に気づいてはっとした。咳ばらいをし、生暖かい視線を向けるロジャーを促す。
「ぼ、ぼーっと見ていないで行くぞ」
「はいはい」
ロジャーは笑いをかみ殺しながら後についていく。
わざと驚かせるために、敷地を隔てる生垣を通るときにがさがさと大きな音を立てた。
だが、先に侵入者の存在に気づいた彼女の犬が、低くうなってこちらを眺めている。
「こら、駄目よ、ドルフ」
フィオナはゆっくりと犬を抱き上げた。不満そうに犬が小さく「キャン」と吠える。
そして彼女が茂みから顔をのぞかせた。
「やあ、フィオナ姫」
「これはオスニエル様。どうなさいました?」
フィオナからは、先ほどまでの楽しそうな表情が消えている。むしろ感情を殺したような無表情となっていた。オスニエルはなぜか不愉快な気分になる。
「婚約者のご機嫌伺いに来ただけだ。どうだ。不便はないか? 国に帰りたいなどと思っているのではないだろうな」
「おかげさまで、楽しく過ごしております。ややこしい貴族同士の付き合いは少なく、侍女のポリーは素直で、話し相手としても最高ですわ」
軽やかな笑い声は、耳に心地よく、目には力があり生き生きと輝いている。
オスニエルは見とれていた自分に気づいてはっとした。咳ばらいをし、生暖かい視線を向けるロジャーを促す。
「ぼ、ぼーっと見ていないで行くぞ」
「はいはい」
ロジャーは笑いをかみ殺しながら後についていく。
わざと驚かせるために、敷地を隔てる生垣を通るときにがさがさと大きな音を立てた。
だが、先に侵入者の存在に気づいた彼女の犬が、低くうなってこちらを眺めている。
「こら、駄目よ、ドルフ」
フィオナはゆっくりと犬を抱き上げた。不満そうに犬が小さく「キャン」と吠える。
そして彼女が茂みから顔をのぞかせた。
「やあ、フィオナ姫」
「これはオスニエル様。どうなさいました?」
フィオナからは、先ほどまでの楽しそうな表情が消えている。むしろ感情を殺したような無表情となっていた。オスニエルはなぜか不愉快な気分になる。
「婚約者のご機嫌伺いに来ただけだ。どうだ。不便はないか? 国に帰りたいなどと思っているのではないだろうな」
「おかげさまで、楽しく過ごしております。ややこしい貴族同士の付き合いは少なく、侍女のポリーは素直で、話し相手としても最高ですわ」



