8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 たどり着いた廊下の突き当りの扉の前に、ひとりの侍女が待っていた。
 侍女長が彼女を紹介してくれる。

「ここから先の三部屋と内庭はフィオナ様のテリトリーでございます。現在はほかの妃がおりませんので、この建物自体には空き部屋が多いのですが、ここ以外はご使用にならないよう、お気を付けください。そして、彼女がフィオナ様付きとなる侍女、ポリー・サンダース男爵令嬢です」

「よろしくお願いいたします」

 ポリーは、茶色の髪を後ろでひとつに三つ編みしている。赤茶の瞳がくりっとしていて、頬に薄いソバカスがあるのが特徴だ。

 彼女のバックグラウンドについては、前世である程度知っている。父親は商人で、金で爵位を買ったと言われている成金だ。そのため、ポリーは貴族令嬢として社交界デビューしたものの、生粋の令嬢たちからは白い目で見られているのだ。

 彼女自身は悪い子ではなかったが、社交界で馴染むために、上級貴族からの命令には逆らわないようにしていたのだろう。フィオナの情報はたいていポリーから他の令嬢に、そしてオスニエルにと渡っていった。

(気を引き締めないと……)

 彼女には弱みとなるようなことを見せてはいけないのだ。
 警戒心もあってじっと見ていると、ポリーは申し訳なさそうにうつむいた。

「ふぃ、フィオナ様、ご案内します。えっと、こちらです」

「ありがとう。きゃっ」

 突然、フィオナの腕の中でおとなしくしていたドルフが顔を上げ、ぴょんと地面に降り立った。

「こら、駄目よ。ドルフ」

「キャン」

「駄目。こっちにいらっしゃい」

 ドルフは、もの言いたげにじっとフィオナを見上げている。

「どうしたのよ」

 しばらくにらみ合いしていたが、ドルフが腕に戻ってくる気配はない。困ってポリーの方を見ると、彼女の目はドルフにくぎ付けになっていた。フィオナは慌てて弁明する。