8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

 そこから一時間ほどイライラしながら室内を歩き回っていると、かわいそうなロジャーが慌ててやってくる。

「勘弁してくださいよ、オスニエル様。俺が帰ったの、何時だと思っているんですか」

「知るか。俺が戻らないのだから、ずるずると夜会会場にいる必要もなかっただろう」

「いつ戻ってこられるのか分からないのに、勝手に帰るわけにいかないんですよ、こっちは」

 ロジャーは寝不足の目をこすりながら、訥々と説明する。寝て三時間も経たないうちに起こされ、慌てて身支度を整えてきたのだ。文句のひとつくらいは言いたい。

「ロジャー、昨日の給仕を全員集めて、不審なことはなかった聞いて回れ」

「フィオナ姫の毒殺を疑っておられるのですか?」

「そうだ」

 早く行け、と言ったのに、ロジャーは悠々としている。

「なにをしている、ロジャー」

「急がなくても手配は済んでいるからですよ。フィオナ様の護衛騎士であるカイが、フィオナ様の飲んだグラスを調べるよう、薬剤師に依頼しました。かかわった給仕や、令嬢からも話を聞いてあります。今日オスニエル様に確認をとり、判断を仰ぐところだったのです」

「……そうなのか」

 拍子抜けしたが、話が早いのは助かる。

「彼女にカクテルを勧めた令嬢は、ステイシー・ミルズ侯爵令嬢です。彼女は、フィオナ様と仲良くなりたいと思っていたそうで、ダンスの後ならば喉が渇いているだろうと会話のきっかけにしたかったとおっしゃっています。カクテルは給仕がまとめて運んでいたもので、特にどれかを選んだということはないそうです。実際同時に数名の令嬢がカクテルを選んだそうですが、体調を崩した人間はおりません」

「では、作為的ではないということか?」

「ですが、フィオナ様が飲んだグラスからは毒物反応がありました。ここから考えられることは、参加者を無差別に狙ったテロ的な行為だということですね」

「いや、それはおかしいだろう。無差別に狙うならば、そもそも毒物を全てのグラスに入れればいい話だ。たまたま毒の入ったカクテルがフィオナにあたるなんてことがあるのか?」