「真夏と綾……!」


思わず大きな声を出してしまいそうになり、両手で口をふさぐ。


あの2人が本当にここまで来てしまった!


焦りで背中に冷や汗が流れていく。


その時綾が2階へ視線を向けたので、あたしはすぐにしゃがみこんだ。


心臓が早鐘を打ち始める。


玄関も1階の窓のカギも全部ちゃんとかけているから、きっと大丈夫だ。


両手で口を塞いだまま、外の音に意識を集中させる。


2人は屋敷の玄関周辺で行ったり来たりしていて、入れるかどうか確認しているみたいだ。


「思ってたよりも綺麗だよね」


綾の声が聞こえてくる。


「本当だね。誰かがちゃんと管理してるんだよ。お化け屋敷なんて嘘じゃん」


真夏は怒った声を上げている。


妙な噂のせいであたしが休んでいると思っているのかもしれない。


「もしかしたら誰かが入居するのかもしれないし、今日はもう帰ろうよ。外観だけで十分わかったからいいじゃん」


「うんそうだね。これで美鈴と雅子を黙らせることができる!」


真夏が満足そうに言い、2人の足音が遠ざかっていく。


足音が完全に聞こえなくなってからあたしはそっと立ち上がった。


窓の外を確認すると、2人の姿はすでになかったのだった。