「徹……。

あんたもここまで逃げてきたんだ……」


「ああ。

オレがあの校舎内のパニックで、みんなと校庭まで逃げてきたとき、理恵と真美の姿が見えなくて気にしていたんだ。

お前たちが生きてて良かった」


「私たちが死ぬわけないじゃん。

こんなところで」


理恵がいつものように強気なセリフを口にすると、徹がようやく微笑んだ。


徹は空手一筋で、乱暴なイメージもあるけれど、本当は優しい人だと真美は思っていた。


クラスメイトにも、友達にも、そして理恵にも……。


「ねぇ、徹。

ここに見えない壁があるのに気づいているよね。

この壁って、いったい何なの?

私たちはここから出られないの?」


「それはオレにもわからない。

だけど、この見えない壁は小又兄弟の呪いだとオレは思う。

もしも小又兄弟の呪いが解ければ、この壁も消えてなくなるんじゃないかって思っている」


「でもさ、どうすれば小又兄弟の呪いが解けるの?」


「そんなことわかるかよ!

わかっていたら、とっくに呪いを解いてる!

どうしていいかなんて、オレにだってわからないよ」


理恵と徹が言い争っている中、急に空が黒い雲に覆われ始めた。


さっきまで明るかった空は急に暗くなり、ただでさえ不安だった夢野学園の生徒たちの不安を駆り立てる。


今から更に良くないことが起きる予感をここにいるみんなが共有していた。


今日はきっと人生で最悪の一日だ。