「兄ちゃん、さっきのクイズの答えを教えてよ。

兄ちゃんのあだ名って何だったの?」


「いいぞ、良雄。

兄ちゃんが教えてやる」


小又兄はそう言うと、何かを思い出したかのように瞳に怒りを宿して、死んでいる陽子の頭上で大ハンマーを振り上げた。


「オレのあだ名は……、ミニ豚!

バイ菌!

クルクルパー!」


小又兄は振り上げた大ハンマーを全力で死んだ陽子の頭に振り下ろした。


小又兄が振り下ろした大ハンマーのヘッドは、陽子の頭蓋骨を砕いて、陽子の頭から真っ赤な血が飛び散った。


「まだあるぞ!

家畜!

くそ豚!

バカ豚!

発育障害!

知的障害!

人間になれないくそ豚野郎!」


小又兄は自分のあだ名を叫びながら、陽子の頭を何度も大ハンマーで叩いていた。


小又兄は10年前の記憶を思い出す度に、怒りと悔しさと憎しみが、体の中から溢れ出してくるのだ。


小又兄は狂ったように、時間も忘れて、死んだ陽子の頭を大ハンマーで叩き続けた。


やがて陽子の頭が潰れた肉の塊になり、原型がなくなってしまった頃、小又兄はようやく大ハンマーを振るのを止めて、となりにいる良雄に目を向けた。