数分後、電車に乗り込んで空いている席を探す。

真ん中の車両は既に席が埋まっていたので、先頭車両に移動して、ふたりがけの席に座った。



「ねぇ、お金かかる場所じゃないよね?」

「大丈夫だよ、タダだから安心して。降りる駅に着いたら教えるから」



もう、どんだけケチなんだよ。
ってか、そんな可愛く見つめられても困るよ。

教えたいけど、それじゃサプライズの意味がないから我慢だ。



「雪塚さんってそんなにケチだったっけ」

「あー……多分親の影響かも。お金に対して厳しいんだよね」



そういえば、日記に三者面談でぶちギレたって書いてあったな。

親から進学先と学部を勝手に決められたって……。



「……実はね、お父さんもお母さんも、私みたいに将来の夢があったんだって」



切ない眼差しで話し始めた。


父親は、高校と大学、どっちも受験で失敗してしまい、自信をなくして夢を諦めた。

母親は、親から逃げるように美大に進学。
しかし、なかなか上手くいかず……なんとか卒業したものの、奨学金の返済に苦労した。


俺が家に行った日の夜、もう1度両親と話し合いをして、その時に知ったんだそう。