褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

教室に戻ると、緊張が解けたのもあって机にだらーんと突っ伏した。



「お疲れ様。大丈夫?」

「……どうしよう、お兄ちゃん無視しちゃった」

「ええっ⁉ 目合ったの?」

「うん……私達の列の斜め後ろあたりにいたみたい」



前の席に座っている可南子に半泣き状態で説明し、再び突っ伏す。


緊張している私を安心させようとしてくれたんだろうけど、あの状況で手を振り返せるわけがない。

そんな余裕と勇気なんてないもん。



「帰ったら絶対、なんで無視したんだよ! って怒られちゃう」

「お兄さん、なんだかんだ実玖のこと大好きだもんね」



「ドンマイ」と可南子は笑いながら私の肩を優しくポンと叩いた。


お兄ちゃんだけじゃなくて、西尾先輩のことも無視したんだった。

笑いかけてくれたのに、思いっきり目逸らしちゃったもんな……。


怒らせちゃったよね。傷つけちゃったよね。ごめんなさい……。