褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

階段を上がり、兄の部屋の前にやってきた。


この状況……卒業式の時と同じだ。

最初は怖かったけど、今はだいぶ……いや、まだ少し怖い。


お兄ちゃんの友達だから悪い人ではないと思うんだけど……似てるんだよね。中学時代好きだった人に。


じっと目を見つめてくるところとか、明るく挨拶するところとか。あとは優しい笑顔。

顔は全然だけど、雰囲気がすごく似ている。

多分それが心臓がバクバクする原因だと思う。


そっとドアを開けて中へ。

テーブルの上におぼんを置くと、早速兄がお菓子に手を伸ばした。


相変わらず食い意地が張ってるなぁ。

自分も腰を下ろし、個装されたクッキーを手に取ると……。



「実玖、今日絵描いたろ? 東馬に見せてやれよ」



唐突な発言に思わずクッキーが喉に詰まりそうになった。

口の中を空にして尋ねる。



「……なんで」

「絵のこと話したら見たいって。だから今日呼んだんだよ。な?」



笑いかける兄に、先輩は口をモゴモゴさせながら静かに頷いている。


さっきから全然しゃべらないなって思ってたら、お菓子食べてたから黙ってたんだ。

所作もお上品なんだなぁ。