褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「じゃあ……他の理由?」

「あ……いえ、何でもないです。続きしましょう」



再び尋ねたけれど、返事を濁して目を逸らされてしまった。


そんなぁ。
俺のせいで何か悩んでいるのなら、直接話して欲しいけど……言いにくいのかな。

実玖ちゃん優しいから、もしかしたら気を遣っているのかも。



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「ただいま~」

「おっ、おかえり」



いつもより少し早く帰宅すると、珍しく父がエプロンを着て料理をしていた。

油が飛んで「アチチッ」と小さく叫びながら野菜を炒めている。


ソファーに荷物を置き、斜め後ろから声をかける。



「お父さんが料理なんて珍しいね」

「あぁ、お母さんの調子が悪いから代わりに作ってるんだよ。“ツキ”が来たんだってさ」



炒め終わった野菜を菜箸で皿に入れながら答えた父。

なるほど。今日はやけに体に優しそうな物ばかりだなぁって思ってたら……そういうことか。



「お父さんはテーブルにご飯を置くから、東馬はお母さんにご飯を持っていってくれ」

「はーい」



野菜炒めと味噌汁とお茶漬けが乗ったおぼんを持ち、両親の部屋がある2階へ向かった。