【芦田梨花side⑩】

忍の遺書の手がかりをつかんだ私は、また明日、雄一と会う約束をして家に帰った。


何度も無理かもしれないと思い、あきらめかけていた忍の呪いを解くカギは、きっと明日に見つかると私は思う。


忍の遺書を見つけた私たちは忍の遺書を開き、忍が伝えたかったことを知るのだけれども、そこにはたくさんの恨みや憎しみが込められていそうで怖かった。


学校で誰とでも気さくに話せる私には、忍が誰とも話さない理由がよくわからない。


自分から明るい笑顔で話しかければ、相手も笑顔で言葉を返してくれるはずなのに、忍の場合はそんな感じではなかったのだろうか?


私は忍につけられていた陰キャ眼鏡というあだ名のことを考えた。


陰キャ眼鏡というあだ名は、忍の内面も外見も否定している嫌な言葉だ。


そんなあだ名が定着してしまった忍は、陰キャ眼鏡という言葉のレッテルから逃れられず、一人で苦しんでいたのだろうか?


みんながおもしろがって言っていたそのあだ名は、忍の心を大きく傷つけていたのだろうか?


だとしたら私たちは忍に対して、ずっと言葉の暴力を振るっていたことになる。


そしてその言葉の暴力は、私たちが思う以上に忍の心を傷つけていたに違いないのだ。


私は目を閉じて、忍が教室でみんなからバカにされていたあの日のことを思い出していた。


もしかしたらあのとき、私は忍を救えたのではないかと思いながら。