「まずは忍の遺書を見つける手がかりを探さなくちゃいけない。

想像とか仮説の類いでいいから、忍の遺書がありそうなところを考えて、それから行動するんだ」


私は雄一のその言葉に小さくうなずいた。


雄一は私と違って、いつでも今できる最善のことを考えてくれる。


そんな雄一は私の心の拠り所だ。


雄一さえいれば、きっと事態は好転する。


私はそう信じて雄一に言葉を返していた。


「遺書みたいな大切なものって、親とか兄妹とか自分の身近な人にしか預けられないと思う。

私ならきっとそうすると思うから」


私がつぶやいたその言葉に雄一がすぐに反応した。


「それじゃ、忍のアパートに遺書がないってことは、忍の遺書があるのは忍のお母さんの家かもしれない。

忍の両親は忍が小学生のときに離婚しているはずなんだ」


私は雄一のその考えにかすかな希望を感じていたが、それと同時に母親の家の方に遺書を置く特別な理由があるのだろうかと思った。


忍の母親が忍の遺書を持っている可能性は低いと私は思う。


でも、そこに少しでも可能性があるのなら、私は忍の母親に会うべきだ。


あきらめたらすべてが終わる。


私は雄一の仮説を信じたい。