「もしかして、ここには遺書がないのかも……」


私が弱気になってそう言うと、雄一が焦った様子でこう言った。


「ここに遺書がないとしたらどこにあるんだ?

忍が遺書を置いておける場所なんて限られているはずなのに」


「遺書なんて本当はない、なんてことはないよね……」


「それはないと思う。

忍が何度も『遺書を探せ』とメッセージを送ってきたのは、オレたちに何かを伝えたいからのはずなんだ。

だから忍の遺書はきっとある。

オレたちがまだ探していないどこかに」


私は雄一が言った「『探していないどこか』ってどこなの?」って叫びたかった。


忍の遺書がなければ、忍の呪いは決して解けない。


忍の呪いはいつか発動して私の命を奪っていく。


このアパートのどこかに忍の遺書があるはずだと信じていただけに、忍の遺書を見つけられないショックは大きかった。


(もしかして私は死ぬの?)


そんな不安と恐怖が私の心に広がって、私は逃げ出したい気持ちになっていた。


そしてそのとき、雄一が慌てた声で私に言った。


「ヤバい……。

忍のお父さんがこっちに来る」


雄一のその言葉で私が窓の外に目を向けると、コンビニの袋を手に持った忍の父がこっちの方に歩いてきていた。