「ない……。

ないよ……。

忍の遺書がどこにもない」


私がそう言ったその声は、悲鳴にも似ていた。


この部屋の中を隅々まで探したはずなのに、忍の遺書がどこからも出てこないのだ。


私は予想とは違うこの事態に焦り、忍の父が戻ってくる時間ばかりが気になり始めた。


もしも私たちが忍の父と出くわしたら、忍の父はまた私たちを怒鳴り散らし、私たちをここから追い出すだろう。


私はそんなことを思うと、泣き出しそうになりながら、まだこの部屋の中で探していない場所を考えていた。


でも、そんな場所がどうしても見当たらなかった。


この部屋にきっと忍の遺書があるはずなのに……。