【芦田梨花side④】

「ここだよ。

忍の住んでたアパートは」


古くて壁の色が変色しているアパートの前に立った雄一が、そのアパートを指差して私にそう言った。


私がそのアパートを見る限り、このアパートの良いところは家賃が安いことくらいだ。


私の両親は共働きで、普通の家庭よりは収入が多い方だから、こんなボロボロのアパートに住むことを考えたことはないし、アパートの中の様子を見たこともない。


私は忍の住んでいたアパートを少し離れたところで見つめながら、このアパートに入ることをためらっていた。


きっとそこには自分が知らない何かがある予感がしたから。


そして私はそれを見てはいけない気がしていたから。


そんな私の気持ちに気づいて、雄一が私に優しくこう言った。


「梨花、一緒に行こう。

忍の遺書を見つければ、忍の呪いはきっと終わる。

心配は何もいらない。

忍にはオレがついている」