【杉田忍side①】

その日、私が学校に行くと、私の机の上に菊の花が一輪入った花瓶が置かれていた。


私はそのことに戸惑い、自分の机の前で立ち尽くしていると、周りからたくさんの視線を感じ、小さな笑い声が複数聞こえてきた。


私は自分が見せ物になっていることに気づき、その場から逃げ出してしまいたい気持ちにかられたが、実際、そんな勇気もなく、花瓶をどかすこともなく無言のまま席に着いた。


クラスのみんなは私をからかい、バカにして、私がどんな反応をするのかを見て、優越感に浸っているのだ。


私にはみんなの悪意に満ちた気持ちが透けて見える。


私はこのクラスにいる人間が大嫌いだ。


私のそんな憎悪にも似た気持ちは、席に座りうつ向いている私の心の中でどこまでも大きく広がっていく。


この教室ごと消し飛んで、みんなが死ねばいいのに。


いつも私をバカにしているあいつらの顔が恐怖でひきつってしまえばいいのに。


私の心に浮かんでくるのは、いつだって大嫌いなクラスメイトを呪う物語だ。


もしも私が人を呪える悪魔だったら……。


もしも私に人を残酷に殺せる力があったら……。


そんなクラスメイトの不幸を願う妄想だけが私の壊れそうな心を支えていた。


この教室に私の居場所はどこにもない。


この教室にいるのは敵だけだ。