「手伝えなくてごめんね。じゃあ、私行くね」


これから嶺亜とデートだという萌花ちゃんは、小さく手を振り帰って行った。


嶺亜の部活がない水曜日は、ふたりは決まってデートしているんだ。


「ふう……」


萌花ちゃんを見送って、息を吐く。


本当は断りたかった。だって、黒澤先生とはもうあまり関りたくないから。


それに、凪くんの前で髪ゴムを返されたときはびっくりしちゃった。


忘れてた私も悪いけど、あんなところで渡さなくても、ねえ?


「乃愛、どこ行くの?」


あ、凪くん。


ちょうど帰るところだったのか、リュックを背負って教室から出てきた。


「え、えと……、岡本先生に用を頼まれて」


そう答えると、凪くんの眉間にシワが寄った。