入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。

☆☆☆

アパート周辺は街頭が少なく、夜に出歩くには少し勇気がいる。


駅の近くにある大きな公園の石段を、美緒は一段飛ばしに登っていく。


公園内を突っ切れば近道になった。


息を切らしながら石段を登りきり、アパートまで走った。


夜の空気が冷たいけれど、今はそれが心地よく感じられる。


部屋の窓からは光が漏れていて、テレビの音も聞こえてきていた。


「陽菜さん、空けて!」


アパートの玄関前に立ち、インターフォンも鳴らさずに声をかける。


「美緒さん?」


驚いた表情の陽菜が玄関に出てくる。


同時にその腕を掴んでいた。


「ちょっと来て!」


そう言うと、強引に陽菜をアパートから引っ張り出して来た道を戻りだした。


陽菜は足を絡ませてこけそうになりながらも付いてくる。


「美緒さん、どうしたんですか!?」


「陽菜さんはもっと柊さんにわがままを言うべきです」


前を睨むようにして歩きながら美緒は言った。


「え?」


「もっと自分をさらけ出して、安心させてあげてよ」


「……」