翌日から美緒はなにもしなくなった。


自分の仕事だけはしっかりとこなす。


しかし、陽菜がしていた家事には手をつけない。


朝は7時には目が覚めていたにも関わらずベッドに寝転んだままで、大河が出勤するのを見送りもしなかった。


お風呂掃除もご飯も掃除機も洗濯もしない。


お昼にピザを注文して、食べ残しはそのままテーブルに放置した。


そしてパジャマ姿のままソファに寝転がっていると、大河が帰ってきた。


「ただいま」


いつもと同じ調子で部屋に入ってきた大河が一瞬足を止めた。


首だけ動かして「おかえり」と声をかける。


「昼はピザにしたんだ」


さっそく食べかけのピザを見つけて聞いてくる。


「うん」


「美味しかった?」


「まぁまぁかなぁ」


答えて、床に落ちたテレビのリモコンを足で引き寄せた。


どうだ。


これで幻滅したんじゃない?


そう思ったのだが、次の瞬間大河は大きな声で笑っていたのだ。


ビックリしてソファの上で上半身を起こす。


大河は体をくの字にまげて冗談かと思うほど笑っている。