私は里山高校の一年三組の教室に入っていくと、憂うつな気持ちで席に着いた。


そして、昨日の夕方と今日の朝に見たあの不気味なノートの内容を、うつむきながら思い出していた。


(あのノートに書かれていた字は間違いなく私の字だ。

だけど、私にはあんな文章を書いた記憶がない。

あのノートのことをたくさんのことを想像してみて、こんなことが起きた理由に一つだけ心当たりがある……)


私は自分が考えている仮説を思うと、ゾッとして体から血の気が引いていた。


(私の中に私以外の人格がいる。

その私以外の誰かが私が寝ているときに、私の体を乗っ取ったのだ。

思い当たるのは、里山高校の都市伝説……。

私の体の中には、あの浜中美澄が存在している……)


私が優子と一緒にこの一年三組の教室で浜中美澄の幽霊を呼び出したとき、あの火傷でただれた醜い顔をした浜中美澄の幽霊が、私の体の中に入り込んだのを私たちは見ていたのだ。


だけど、その後に私の体に変化がなかったから、私はそのことを意識して忘れようとしていた。


そんな悪夢のような事実を私はなかったことにしたかった。


浜中美澄の幽霊はあの日、この教室で自然と姿を消したのだと思いたかった。


私はそんなことを考えながら、固く目を閉じ、自分自身に話しかた。


(ねぇ、有島咲良。

私は私のままでいられるよね)