すっかり日も暮れてしまった午後六時五十五分に、私と優子は浜中美澄の幽霊を呼び出すために、もう真っ暗な校舎の中に入っていった。


私は優子が教えてくれた里山高校の都市伝説を完全に信じていたわけではなかったけど、優子と一緒に誰もいない静かな校舎に入っていったとき、ワクワクした気持ちが止まらなかった。


私は十五年前に猟奇的な殺人を犯した浜中美澄に興味があったし、もし会えるものなら浜中美澄の幽霊に会ってみたいと思っていた。


そして優子が言ってたように、浜中美澄の幽霊の力で恋が成就するのなら、こんなに素敵なことはない。


いつもは行き慣れている一年三組の教室も、誰もいない校舎をこっそりと歩いていくと、いつもとは違う非日常的な気持ちになってくる。


本当に浜中美澄の幽霊が出てきて欲しい。


彼女の幽霊が幸せだけでなく不幸せも運んでくる可能性があったとしても……。


昇降口から続く廊下を右に曲がり、一年生の6クラスの教室が見えたとき、私はとなりにいる優子に話しかけていた。


「ねぇ、優子。

浜中美澄の幽霊は本当に出てくるのかなぁ?

私ね、正直、ワクワクしてる。

いつもとは違う今のシチュエーションに」


「ワクワクしてるのは咲良だけじゃないからね。

私も里山高校の都市伝説が本当だったらって思うと、ワクワクするよ。

もしも私が聞いたウワサが本当なら、一年三組の教室に浜中美澄の幽霊が現れるはずだから」