「ねぇ、咲良。

十五年前にあった里山高校の事件がわかったところで、話を本題に戻そうか。

咲良はさ、拓実君と今にも付き合いそうになっているあの木村菜々子に負けたくないんだよね。

拓実君と付き合うためなら、なんだってするんだよね」


「私は……、拓実君と付き合えるなら、なんでもしたいって思っているよ。

私みたいに平凡で取り柄のない女の子が、あの拓実君の彼女になれるなら」


「そうだよね。

咲良の気持ちはわかったよ。

それじゃ私が咲良に協力してあげる。

里山高校の都市伝説、十五年前に死んだ浜中美澄の幽霊は午後七時に一年三組の教室に現れる。

浜中美澄の幽霊に恋の成就をお願いすると、恋敵に不幸が訪れ、恋敵に勝つことができる。

だけど、恋が成就した後に、その幸せと同じくらいの不幸が、その人にも必ず訪れる。

ねぇ、咲良。

咲良はこの里山高校の都市伝説を信じる?」


私は優子に投げかけられた質問に即答することができなかった。


もしも優子の話が本当ならば、拓実との恋を実らせた私にも大きな不幸が降りかかる。


私はそのリスクを犯してまで、里山高校の都市伝説を信じ、試すべきだろうか?


浜中美澄の幽霊は、本当に私の味方になってくれるのだろうか?


不透明な未来に私は答えを出せずに迷っていた。


でも、私の心の中にある大切な思いが、私にこう言わせていた。


「もしかしたら、ただのウワサ話なのかもしれないけれど、私は里山高校の都市伝説を信じたい。

私ね、拓実君のことがずっと好きだって言っているけど、自分が拓実君と釣り合わないことくらい知ってるよ。

拓実君と釣り合うのは、木村菜々子みたいな本当にかわいい女の子だよ。

だけどさ、もしも私の気持ちが拓実君に届くのなら、それが反則でも構わないって思ってる。

ズルいことかもしれないけど、私は木村菜々子に負けたくないよ」


「よく言ったよ、咲良!

それでこそ、私の親友!

私に任せて。

私が浜中美澄の幽霊を一年三組の教室に呼び出してみせるから」


優子はそう言って笑っていた。


私はそんな優子の笑顔を見つめながら、優子の言葉に期待していた。