「木村菜々子ってさ、今では学校の都市伝説になっている浜中美澄タイプだよね。

めっちゃ男子からモテて、女子からも人気があって」


「悔しいけど、そうだね。

神様はどうして私と同じクラスに木村菜々子みたいなアイドルを送り込んだんだろう?」


「話が大げさ過ぎるよ。

神様まで話に巻き込まないの」


「そうだけどさぁ。

不満をぶつける相手が神様しか見当たらなくて……」


私はどうしようもない言いわけをしながら、十五年前にこの里山高校にいたはずの浜中美澄のことを考えていた。


浜中美澄はきっと私のクラスの美少女、木村菜々子みたいな学校のアイドルで、木村菜々子よりももっとすごく人気があったのではないか?


生まれながらにして誰からも好かれてきた美澄は、自分に人気があることを息をするみたいに当たり前のことと思っていたのではないだろうか?


そんな美澄が顔にひどい火傷を負って、自分がアイドルでなくなったとき、美澄はどんな気持ちになって、なにを考えていたのか?


一番の友達の朋子に裏切られたとき、美澄はなにを思い、どんな感情を抱いていたのか?


美澄のことを考えれば、興味深いことがたくさん思い浮かんできて、私は美澄のことをもっとたくさん知りたいと思っていた。


そして私はそんな自分の気持ちを抑えきれずに優子に話しかけていた。