真夜中のサイコパス

「ねぇ、咲良。

あなたは自分だけが幸せになれると思っているの?」


私がその声がした方に目を向けると、そこには顔を包帯で覆っている女の子が立っていた。


彼女の顔は包帯で完全に隠れていたけど、私がその子を忘れるはずがない。


この声、この髪型、この瞳。


包帯の女性の正体は優子だ。


私は優子に背中を刺されたのだ。


「私ね、通り魔に襲われて、顔をぐちゃぐちゃにされたんだよ。

ツイてないでしょ。

こんな不幸なことってあるんだね」


「お前、中川優子か?

どうして咲良を刺した?

気でも狂ったのか?」


「うるさい!」


優子はそう叫ぶと無防備な拓実の首をナイフでスパッと切り裂いた。


そしてその瞬間、拓実の首から真っ赤な血が噴水のように吹き出してきた。


私はそんな残酷な瞬間を悪夢でも見ているかのような気持ちで見つめていた。


「大好きな拓実君が死んじゃったね。

咲良、どんな気持ち?

悲しい?

それともうれしい?」


優子の顔は包帯で見えなかったけど、きっとその包帯の下で優子の顔は笑っているのだろう。


あの明るくて、優しくて、友達思いだった優子がこんなにも激変してしまったことに私は本当に驚いていた。


不幸はきっと人を狂わせるのだ。


未来を奪われた人間に失うものなどないのだから。