私と拓実は映画館に出掛けていた。


そして私は拓実と話題になっている恋愛映画を見た。


その映画はとっても感動的で、本当ならば泣いてしまうような内容なのだけれども、私の瞳から涙はこぼれない。


私の意思や感情はもう私の体には伝わらないのだ。


どんどん自分の体から離れていく自分が嫌だった。


端から見たら、私は素敵な恋人と一緒にいる幸せそうな女子高生に見えるのかもしれない。


でも、こんなに近くに拓実がいるのに、私が思っていることは拓実になにも伝わらないのだ。


自分を偽って、スラスラとウソを並べている浜中美澄が憎かった。


どうにかして、あいつのすべてを消滅させたい。


私はそのことだけを心から願っていた。