私が浜中美澄と争ったあの日以来、私の体は浜中美澄に支配されてしまった。


私はちゃんと意識があって、目は見えるし、耳も聞こえるけど、自分の意思で体を動かしたり、話したりすることはできなかった。


浜中美澄は私の体を乗っ取り、私になりすまして里山高校の一年三組の教室に通っていた。


私はそんな浜中美澄から自分の体を取り戻したくて、浜中美澄を私の体から押しのけようとするのだけれども、その度に激しい頭痛に襲われて、私は自分の体を取り戻せずにいた。


浜中美澄に操られている私は以前よりも友達が増えたし、クラスの人気者になりつつあった。


でも、そんなことは少しもうれしくなかった。


だって、私の体を使って動いているのも、話しているのも浜中美澄だったから。


みんなが見ている有島咲良は、偽物の有島咲良だ。


本当の私は浜中美澄の意識の後ろ側にいる。


みんなはそんなことに少しも気づいていなかった。