『ハハハハハッ。

ハハハハハッ。

ハハハハハッ。

よろこべ、有島咲良。

お前の大嫌いな木村菜々子が階段の踊場で倒れているぞ!

頭から血を流して、ピクリとも動かないぞ!』


私に取りついている浜中美澄は狂っていると私は思った。


かつては里山高校のアイドルと言われていた彼女も、顔に火傷を負って、醜い顔になってしまったとき、自分の未来の可能性をあきらめて、他人の不幸ばかりを願う存在になってしまったのだ。


そんな未来を失ってしまった浜中美澄と未来を失いかけている今の私は、同じルートを辿るのだろうか?


そんなのは絶対に嫌だ。


私がサイコパスの浜中美澄と同じなんて……。


私はこの場から逃げなくちゃ。


木村菜々子に会わなかったことにしなくっちゃ。


私はそう思うと、ドキドキしながら辺りを見回し、別校舎に一つしかない階段を全力で駆け下りていた。


私は木村菜々子が倒れているその脇を通り抜け、本校舎の昇降口に向かっていた。


自分が木村菜々子と無関係であるために。


私の犯した罪が私のものだと誰にも気づかれないために。


私は最悪のことが起きてしまった今の状況に泣きたい気持ちになっていたが、私の中にいる浜中美澄はいつまでも声高らかに笑っていた。


それはまるで、未来に怯えている私を嘲笑っているみたいだ。


私は自分に取りついている浜中美澄のせいで、大切な未来を失いそうになっていた。