私と優子が一年三組の教室で、浜中美澄の幽霊を呼び出してから一ヶ月が過ぎた。


その間に少しも変わらなかったことは、私と優子の仲良さだ。


そして、以前と比べて少しずつ変わってきていることは、私と拓実の距離が縮まっていることだった。


拓実は私の顔を見ると、よく私に話しかけてきた。


私は恋愛に奥手な方だから、拓実と顔を合わせると言葉に詰まるけど、その度に私の中にいる浜中美澄が私の体を乗っ取り、拓実と仲良く会話を始めるのだ。


拓実は私の中にいる浜中美澄との会話がお気に入りのようで、話ながら楽しそうに笑っていた。


私はそのときの拓実の笑顔を見る度に複雑な気持ちになってしまう。


私は拓実に好かれたいけど、拓実が話しているのは私を支配している浜中美澄だ。


だから、本当の私を拓実は知らない。


口下手で、内気で、まじめで、一途で、純粋な私のことを……。


優子は拓実と会話が弾んでいる私を見て、私の変化に驚いていた。


でも、本当の私は少しも変わっていなかった。


私があの浜中美澄に取りつかれていること以外には……。