私は左手で必死に右手を押さえ込んでいたが、私の右手が左手を振り払い、またノートに文字を書き始めた。


『有島咲良。

自分の気持ちに正直になったらどうだ?

私にはお前の心の声が聞こえてくるんだ。

お前が声にしなくても、私にはお前の心の声がハッキリと聞こえてくるんだ』


「違う……。

私はそんなことを思っていない……」


『お前はツイているぞ、有島咲良。

お前は願いを叶えられる。

私が木村菜々子を殺してやるから』


「止めて……。

本当に止めて……」


私は小声でそうつぶやきながら、自分の右手を左手で引っ掻いていた。


私の右手の甲から血が流れ出し、私は右手に痛みを感じていたけど、その痛みを感じている右手は私の右手のような気がしなかった。


私の意思に歯向かって勝手に文字を書き続けるその右手は私の敵だと、私は目を見開き、血でにじむ右手を見ながら思っていた。