真夜中のサイコパス

拓実との会話は楽しくて、拓実も楽しそうに笑っていた。


でも、その会話をしているのは、私ではなくて浜中美澄だ。


私の本心を知り尽くしている浜中美澄が、私の気持ちを代弁して、スラスラと言葉を繋いでいるのだ。


私にはそのことが驚きだった。


私の体の中に入り込んだ浜中美澄は、いつ間にか、私の気持ちを知り尽くしていたのだ。


廊下での拓実との会話は五分ほど続き、私たちは前よりもお互いのことを知ることができた。


私は部活に向かった拓実の背中を見つめながら、もしも私があの人の彼女になれたらどんなに幸せだろうと思っていた。


拓実が廊下を右に曲がり、私の視界から消えた後も、私は拓実との会話の余韻に浸っていた。


(大好きな拓実君とたくさん話せた。

楽しかったなぁ。

あんな時間がこれからもずっと続けばいいのに……)


拓実との会話の余韻は今までに経験したことがない幸せな余韻だった。


でも、その幸せな余韻は、私の中にいる浜中美澄の声にかき消された。


(有島咲良。

クズなお前の代わりに、私が拓実と話してやった。

お前は拓実と会話したことに有頂天なようだが、今のままでは、絶対にお前の恋は叶わない)


私は頭の中に直接響く浜中美澄の声に嫌な気持ちになっていた。


そしていつまでも私の中に居続けようとしている浜中美澄に心の中で話しかけていた。


(確かに私は誰もいない一年三組の教室で、あなたに恋の成就をお願いした……。

でも、もういいよ……。

お願いだから、私の中から出ていって!)


私の心の声が浜中美澄に届いているかどうかはわからなかったが、私の頭の中で、また浜中美澄の声が聞こえていた。