余命38日、きみに明日をあげる。


「うん、大好きだけど……。え、でも私、整理券なんて持ってないよ?」

「持ってなくたって、一目見れるかもしれないだろ。ほら、行くよ」

完全にナオの受け売りだが、それをそっくり返す。

「やだっ、どうしよ~~」

嬉しさで立ち尽くしている莉緒の手を引っ張り、エスカレーターで5階まで向かう。

やっと手が握れた。

痩せているから熱を蓄えられないのか冷たい手。

反対に、熱を持った俺の体温で温めてやるように、指先をぎゅっと握る。

手をつなぐというより引っ張ってる──という方が正しい一見雑な行為の裏に、莉緒への愛しい気持ちを込めて。

5階は、サクラのファンらしき若い女性でフロアが埋め尽くされていた。

整理券を持っている人しか、イベントスペースには入れないらしい。

ただ、遠くからは眺めることはできるらしく俺たちは会場の後方からその様子を見ることができた。