余命38日、きみに明日をあげる。


しかもどこか嬉しそうだ。尻尾を振るようなその仕草が子犬みたいで可愛い。

俺と出かけるのがそんなに嬉しいのか? 

なんて、都合のいい妄想だ。

「こんな都会に来るんだったら、もう少しオシャレしてくるんだったなぁ」

行きかう人を見ながらそうつぶやく莉緒だが、俺にとっては、隣を歩く莉緒が一番可愛い。

莉緒の願いを叶えているつもりが、こんなデート気分を味わわせてもらって、俺が夢を叶えてもらっている気分だ。
 
書店につくと、入口にはサクラのサイン会を告知するボードがでかでかと掲げられていた。ファンなのか、オシャレ女子も沢山いる。

「えっ、うそっ! 今日サクラちゃん来るの!?」

それを見た莉緒は、立ち止まり声を上げた。

「サクラの写真集発売のイベントをやるって、テレビで宣伝してたから。莉緒、サクラ好きだろ?」