余命38日、きみに明日をあげる。


「だが、事実だ。この手帳に、確かに倉木莉緒の名前が書かれている。俺は、彼女の魂を運ぶ担当になった」

昨日も見た黒い革の手帳を目の前にちらつかせた。

「倉木莉緒。倉木順一(じゅんいち)と倉木奈々子(ななこ)の長女。2003年11月1日午前3時15分生まれ。A型。身長は155㎝、体重は……」

「ちょちょちょ、まじで何なんだよっ!」

何も見ずに淡々と莉緒のプロフィールを口にする男に、俺は待ったをかけた。

ストーカーじゃあるまいし。

普通じゃ知りえないだろう莉緒の情報を知っていることに、気味の悪さを覚えた。

「信じられない気持ちは分かるが、俺は天からの命令に従うだけだ。あと37日後に倉木莉緒の魂を取りに行く」

ほんとうにコイツは、"死の神"なのか……?

そんなことがあるわけないと頭では思うのに無視できないのは、他ならぬ莉緒の命を引き合いに出されているからだ。

37日後……部屋にかけられたカレンダーを数えていく。

それは12月25日。クリスマスだった。

「ただ、それを回避する方法が一つだけある」
 
……ゴクリ、唾をのんだ。